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植田明志 「童夢」

¥157,143 税込
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「記憶」を媒体とした空間造形から、


ある種のノスタルジーを感じさせる世界を表現する造形作家 植田明志。



無音のような静けさと、理想的な深層心理の核心を探求する、



その作品世界は見る者の心に深い余韻を残します。







「童夢(どうむ)」と題されたクジラをモチーフにしたオブジェ作品。



植田明志の代表作である「山人(やまと)」。



深い山に入り込んだ時にふと感じる気配のようなもの〜



古来より信仰の対象とされ、畏怖されてきた、山々の精霊や妖怪のような



目に見えぬ存在に、姿・形を与えて具現化した作品のシリーズに通づる



身体を覆う樹木の細密なデティルが見事な作品です。







鯨の口内には産声を上げる赤子を想わせる人の顔が造形されています。


鯨髭にあたる部位は途中から変化し、赤子の頭髪にも見えるように処理されています。








「童夢」




暗い宇宙だった。


そこには星もなければ、風の音もない。


満ちているのは、呼吸。


どこからか聴こえる心臓のバスドラムに呼応する度、水面に波紋が広がる。








柔らかく暖かい質感を帯びた空気は、僕を安心させるはずだった。


しかし僕の小さな心臓はドクンドクンと高鳴りはじめた。


加速するそれは僕を苛立たせる。


息が荒くなる。拳を握る。









途端、「何か」の記憶がタイムマシンの様にフラッシュバックした。


「何か」は懐かしい匂いを振りまくくせに、


ろくに挨拶もせず 僕の頭の中を時空を越えながら走り回っている。










れがみるみる速度を上げる。音速を超えて、光速になる。


血が血管を高速で駆け巡り、何百という筋肉を目覚めさせる。圧力がかかった骨が軋む。


鼓動が振動に変わる。振動は振り幅を増していく。


やがて迎えるであろう爆発に備え、周りの空気が張り詰める


光速を超えた「何か」は、果ての白い光に包まれ、僕に手を降る。











やがて一瞬の静寂の後に、全てを突き破った。









聴こえるか、この歌が。


僕の頭上、神々しく光った丸い物体に言い放った。


その光はあまりにも美しく、そして切なかった。


星の光る音は、果てのない夜の静寂に寄り添う。


雲が踊り、風がそれを散らして、また雲が踊る。










僕はそれに合わせて叫び、歌う。


この歌は、産声の歌。



聴こえるか、僕は、此処にいる。





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