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eerie-eery, オブジェ

『アグリとパドマ』

販売価格:44,280円

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  • eerie-eery,アグリとパドマ,ドール,人形写真1

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子供の頃、怖いと感じたこと、好奇心を抑えずにはいられなかった記憶などをテーマに


アクセサリーやオブジェ、洋服の製作、イラストやパフォーマンスなど、


幅広いジャンルに渡って表現活動を展開するアーティスト eerie-eery(イーリー・イーリィ)。


eerieによる立体作品、不気味で少しファニーな人形たちは、


作家自身の分身であるかのように物言わず静かに佇んでいます。












個展「追憶と眠りの国 ~眠りの為の回顧展~」用作品。


死の国[ アムニジア ]にひっそりと佇む歯科医院を舞台に繰り広げられる


追憶の物語と、その登場人物たちを人形で表現したシリーズ。


主人公の歯科医の双子の姉妹『アグリとパドマ』の人形。









アムニジアに生まれた双子の姉妹「アグリ」と「パドマ」。


アグリは手鏡を、パドマは本を手に持って背中でくっついており、


古びた車椅子に座っています。


歯型から "肉体と精神を照合する施設" である歯科医院で働く


彼女達は、訪れる様々な死者たちを診察し、その生きた証を見つけていきます。













『アグリとパドマ』



アムニジアの金色の草原にぽつりと佇む歯科医院にアグリとパドマはいる。


アムニジアにいる人々の殆どは生の国からアムニジアにやって来た人々であるが、


アグリとパドマはアムニジアで生まれた唯一の存在である。





二人の父と母はアムニジアで出会い恋に堕ちた。


両親はアムニジアの草原の真ん中に二人の家を建て生活を始めた。


父は生の国では歯科医であったので二人は自然と歯科医院を営むようになった。


暫くすると二人の間に双子の女の子が生まれた。


そして風変わりなことに双子の子供達は背中でくっついていた。


二人は子供達にアグリとパドマと名付けた。






アグリとパドマはくっついているからか気持ちを共有することが出来た。


それは一つの入れ物の中に二人の人間がいて会話できるような状態であったのだろう。


二人はよく体の中だけで会話をした。






アグリとパドマは双子であるが体の大きさが違った。


アグリの方が大きくパドマは小さかった。


なのでいつもアグリがパドマを背負うような恰好になっていた。


また二人は体が弱く、歳をとるごとに足が弱っていった。


12歳の誕生日を目前にとうとうアグリはパドマを背負うことが出来なくなり、


両親は二人の為に車椅子を作った。












車椅子が出来てから二人は家から出て草原を散歩することもあった。


車椅子を走らせ広い草原を二人きりで散歩する時、


二人は大空を舞う鳥になったり、海原を滑る飛び魚になったりした。


それは二人にとって特別な時であった。






ある時、二人はいつもの様に草原で遊んでいると遠くから歩いて来る人影を見つけた。


人影も二人に気付いたようでこちらに向かって歩いて来る。


二人は不思議そうにその人影を見ていると人影は二人に話しかけた。


 「君達は何処からきたの」


二人はきょとんとしてしまったが


 「お家」


と言って両親の居る歯科医院を指した。


 「そうか。わたしは今からそこへいくのだよ。」


 「何処から来たの?」


二人は人影に尋ねた。


するとその人影は二人に自分に起こったことを教えてくれた。








自分はアムニジアの外から来たこと、


外の世界は生の世界といって皆生きているということ、


そして、恐らく自分は死んでしまったのだということ。


人影の口調はとても優しかった。






話が終わると二人は不思議な気持ちになっていた。


 「じゃあわたしは行くからね」


人影は二人の頭をぽんぽんとやると歯科医院へ向かって歩き出した。


二人は不思議な気持ちになったままその日は遊ぶのを止めてゆっくり家へ帰った。














夜になると二人は両親に今日あったことを話した。


母は二人にゆっくり語りかけた。




「実はね、お父さんとお母さんもその人と同じ様に生の国から来たの。


  そしてここで出会ってここで暮らし始めたの。そして貴女達が生まれた。」


「お母さんもお父さんも、死んでしまったの?どうして?今こうして生きているのに」


「私達は生きているの?死んでいるの?」





困惑する二人に母は優しく語りかけた。




「死というのはとてもいろいろな形があるの。突然真っ暗になったり、忘れられたり。


   旅立ちもその一つ。


   ここは生の国で命を落とした人達がやってくるから死の国と呼ばれているけれど、


   貴女にとっては死の国ではないわね。


   貴女達はここで生まれて生きている。特別な存在なの。


   だから死ぬことがわからないままかもしれない」






二人は怖くなっていた。


自分達と両親の間に深い溝を感じた。


自分達は化け物の様な正体の分からない恐ろしい存在に思えた。






それでも母は続けた。


 「でも死にはいろんな形があるの。


   貴女達もお母さんやお父さんと同じ様に生きて死ぬことも出来る。


   貴女達の足はどんどん弱っていったでしょう。


   それは貴女達の体が少しずつ死んでいるからなのよ。


   それは恐ろしいことではないの。


   だってそれと共に貴女達の背は伸びて言葉を覚えて草原で遊ぶことが出来る様になった。


   死とは生きているからこそ寄り添うものなの」







「…私達はいつ死んでしまうの?」


  
二人は恐る恐る尋ねた。





 「それは誰にも分からない。でもいろんな形でその時は訪れるはず。


   死が完了する瞬間は人それぞれなの。


   お母さんはね、それは忘れられる時ではないかと思うのよ」






「お母さんは忘れられたら死んじゃうの?じゃあわたし忘れない!」


アグリとパドマは母に抱き着いた。


母は二人を優しく抱きしめながら続けた。







「ずっと生きていたらね、やがて忘れることを許さなければいけない時も来る。


  でもそれは酷いことや悲しいことではないの。忘れることも愛することなの。


  とても優しいことなのよ」







アグリとパドマは泣いていた。


いつか終わりが来てしまうなんて嫌だと思った。


ずっとずっと母と父と一緒にいられるのだと思っていた。


でも二人は母のことも父のことも愛していた。






「忘れること、忘れられることを恐れないで」





二人はまだ分からずにいた。


しかしいつか受け入れなければいけないことであるということを必死に飲み込もうとしていた。



















それから朝と夜を何度も繰り返し何年かが経った。


アムニジアの金色の草原の中には変わらず小さな歯科医院はあった。


しかしそこには二人の両親の姿はなく、変わりにアグリとパドマが歯科医として働いていた。





アグリがやって来た患者の口の中を小さな鏡で覗き混むと


背中の方ではパドマが本をぱらぱらとめくり何かを探している。


暫くするとこの患者が何者か判明した。





パドマは患者が無くした大切な物を封筒に入れて渡した。


患者は封筒を受け取ると、すっきりとした様子で歯科医院を後にしていった。





沢山の人達を送り出し、二人は自分達が何者か少し分かった様な気がした。


アグリとパドマは誰かの生きた証を許す為、今日も金色の草原の真ん中で待っている。















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