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植田明志 「星を繋ぐ王さま」

¥440,000 税込
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「記憶」を媒体とした空間造形から、


ある種のノスタルジーを感じさせる世界を表現する造形作家 植田明志(うえだあきし)。


無音のような静けさと、理想的な深層心理の核心を探求する、


その作品世界は見る者の心に深い余韻を残します。










個展「虹の跡」用作品。


「星を繋ぐ王さま」と題されたオブジェ。


インドゾウの頭骨からインスピレーションを得て造形された姿は


長い2本の牙と、エキゾチックな身体の模様が特徴的です。












ふたつの手が繋ぎ合わさったような身体をした「星を繋ぐ王さま」。


惹かれ合う二人は、ふたつでひとつの存在。


王さまの下半身を構成する手は、寂しくて膝を抱えたような姿をしており


もう一方の上半身から伸びた手が、優しく包み込んでいます。












石粉粘土。


全長:約73㎝(牙の先から本体最後部まで)。


高さ:約46㎝。


幅:約22㎝。



※こちらの作品は、植田明志個展「虹の跡」会期終了後(2016年11月16日)のお渡しとなります。


※こちらの作品はラッピング対象外となっております。
















『星を繋ぐ王様』



こんなに深い夜の中、砂場で子どもたちが二人で遊んでいた。


その砂場はきらきらと金色に輝いているように見えた。


月明かりのせいかと思ったが、夜空に月は浮かんでいなかった。


二人は何かひそひそと話しながら、砂を細く、月のない夜空に伸ばしていった。


彼らのとなりには、古ぼけたプラスチックのシャベルと、


誰かの名前がかかれたバケツが置いてあった。


その名前は、すり減って読めなかった。













数本の砂の塔ができた。


砂を固めた水のせいか、より金色がちらちらと輝いていた。


それはまるで王冠のようにみえた。








どこか遠い宇宙で、ひとつの星が、仲間外れにされた星を呼んだ。


仲間外れにされた星は、誰にも見つけてもらえていない、


ハッブル宇宙望遠鏡にすらも写っていなかった。


太陽ができるずっと前から、この世の隅っこにいた星。


膝を抱えた腕は、深い闇の中で白く震えていた。












名前を呼ばれたとき、もっと震えた。


大木が風に吹かれたような、綺麗な震えだった。


そっと暗闇に腕を伸ばす。指先が触れた。思わず引っ込めた。もう一度、伸ばす。


もうひとつの手が、震えていた星の手を、探るように、確かめるように、握った。







懐かしい感触だった。


懐かしさなんてあるはずない。なのに、いつか会ったことがあるように思えた。


暖かい。いつかの夏の終わりの、温度。


確かな鼓動があった。このリズムも、知っている。


ふたつは少しだけ笑った。涙が流れた。













曖昧な記憶達は涙とまじり合い、光り合った。


それは確かな光になり、ひとつの大きな星になった。


いつしか、あの砂場のふたりはいなくなっていた。


後には、何かを祝福するように、金色に光り続ける王冠があるだけだった。


いつまでも、光っていそうな、微笑み合っていそうな、輝きだった。






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