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植田明志 「夢をみる公園」

¥132,000 税込
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「記憶」を媒体とした空間造形から、


ある種のノスタルジーを感じさせる世界を表現する造形作家 植田明志(うえだあきし)。


無音のような静けさと、理想的な深層心理の核心を探求する、


その作品世界は見る者の心に深い余韻を残します。










個展「虹の跡」用作品。


「夢をみる公園」と題されたオブジェ。


誰もいなくなった公園にひっそりと佇む遊具のシルエットを


太古の恐竜の姿に例えた作品です。










石粉粘土。


アクリル彩色。


台座部分 全長:39.5㎝


高さ:約25.5㎝。














『夢をみる公園』



公園で約束をしていた。


あたりは真っ暗。夏の終わりを告げる歌を虫たちが歌っている。


月はまんまる。途中大きな怪獣みたいな雲が通りかかり、月を目にして遊んでいた。












公園の門をくぐる。その時に短い合言葉が必要だった。




公園に入ると、すでに遊具たちは夢をみている最中だった。


かちこちと、氷のような音を鳴らしながら、本来の自分たちの姿を取り戻していた。





やあ。と上から声がした。


「久しぶり。」僕はそう返す。


「あのときから随分時間が経ったね。」













沢山の話をした。



いつかの夕方が綺麗だったこと。そのときにススキまみれになったね。


噛まれたこともあった!あれは君が悪い。


茂みを抜けると、君の身体にはたくさんのひっつきむしが付いていて、僕が取ってあげたんだぜ。


あのとき、君は声を出して泣いていた。ずっと見てたんだよ。






気づくと、すでに星たちは消えて、月は溶けていく氷のようにその姿を滲ませていった。


遠くでコバルトブルーに沁みていく空は、今日という日そのものを強制的に知らしめさせた。













さよならだね。



僕は必死で涙を堪えた。


また夜がきたら、会えるよ。





その声は、月と同じように空に滲み、風に吹かれて消えて行った。


それ以降、すっかり夜の公園に行かなくなった。


何故だか自分にもわからなかった。


いつからかぽっかりと忘れていたみたいに。












ふと思い出したのは、寒くなりススキがふわふわと空を撫でだしてからだった。


今日、天気がよかったら、行ってみよう。




少し大きくなった僕を、彼はびっくりするだろうか。












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