「記憶」を媒体とした空間造形から、
ある種のノスタルジーを感じさせる世界を表現する造形作家 植田明志。
無音のような静けさと、理想的な深層心理の核心を探求する、
その作品世界は見る者の心に深い余韻を残します。
「モクモク様」と題された、空に浮かぶ雲を神格化した、巨大なオタマジャクシのような姿をした雲の神。
背中にはどこかの街の記憶を背負っています。
夕焼けに照らされた雲の向こうに想いを馳せた情緒溢れる作品です。
高さ 43㎝ × 横 48㎝(台座部分含む)。
石粉粘土 アクリル彩色 透明樹脂
※こちらの作品は植田明志個展「惑星少年」会期終了後、2013年4月21日以降のお渡しとなります。
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「モクモク様」
その昔、滅んだ街がありました。
誰もが見慣れた雲の中で、人知れず滅びました。
そこは地味な街でした。
人も100人くらいしか、住んでいなかったし、王様もころころ代わりました。
でも、たまに聞こえてくる笑い声や、楽器の音。
夕方になると子供たちが遊び始めます。
その雲は、そんな街が好きでした。
みんな雲は覚えています。
あの少女がくれた、花のこと。
あの少年が夜一人で願った、夢のこと。
あの恋人達の、約束のこと。
あの家の夕食の匂い。
あの川で取れる魚は美味しいこと。
あの階段の13段目に添えられた、小さなお墓。
雲は、まだ信じていません。
全てがなくなってしまったこと。
そして雲は、昔の記憶の世界に包まれながら、
もうすぐ、消えていきます。
いつものように、幸せそうに、少年の夢を願いながら。
流れる雲は、いつかの記憶。
フワフワ浮かんで、流れて消えてく。