「記憶」を媒体とした空間造形から、ある種のノスタルジーを感じさせる世界を表現する造形作家 植田明志。
無音のような静けさと、理想的な深層心理の核心を探求する、その作品世界は見る者の心に深い余韻を残します。
「 re:Re 」と名付けられたオブジェ作品。
2つの恒星が両者の重心の周りを軌道運動している天体 "連星(binary star)〜双子星"
をコンセプトにした作品です。
2つの星が連なったようなシルエットと、緻密に作り込まれた鱗状のデティルに
高い造形技術が感じられる作品です。
※こちらの作品は植田明志個展「惑星少年」会期終了後、2013年4月21日以降のお渡しとなります。
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「ほら、やっぱり点滅してるよ。」
「白、赤、・・・黄色かな・・・?」
冬の名残が残る澄んだ空気に、ふたりの息が重なる。
重なった息は、雲みたいに白くなり、夜の向こうへ流れた。
「あれがスピカ?」
「そう、ふたつの星がすごいスピードで回転してるの。だからチカチカ点滅して見えるんだって。」
少女はそう言って歌を口ずさむ。
聴いたことのある歌だが、どこで聴いたか覚えていない。
かすかな記憶を頼りに、僕も口ずさむ。
古びた石垣の上が、外灯で照らされる。
そこから見える川は、ビルを写しもうひとつの世界を創り出す。
少女は僕の周りをくるくると踊りながら回る。
どこかの飛行船が、
凍てつくクジラが、
動かなくなった天使が、また歌う様に。
誰かの記憶と、僕の記憶。
誰かの夢と、僕の夢。
ふたつで、ひとつ。
少女は、踊りながら僕の顔を伺う。
僕は顔を見合わせて、あっと笑った。