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「Lebka konjugát 」

通常価格:¥132,000 税込
¥120,000 税込
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日本一クレイジーな骨董店「アウトローブラザーズ」を営む傍ら、


動物の剥製や骨格、古物などを癒合させ、唯一無二の作品を制作する現代の錬金術師・マンタム。


チェコのシュルレアリストであり映像作家のヤン・シュヴァンクマイエルはじめ


様々なアーティスト、クリエイターとの親交でも知られています。


死より生まれる新たな文化をコンセプトに掲げるマンタムの作品たちは、


錬金術的と表現するに相応しいプリミティヴな力強さと奇妙な美しさに溢れています。









個展「記憶の残骸物とそれを照らす為の月」用新作。


「Lebka konjugát 」と題された結合した豚の頭骨を用いた照明型作品。


個展用の作品は1〜10までのナンバリングが施されており、


「Lebka konjugát 」には #5 が振られています。





高さ:約73㎝。


頭骨部分 横幅:約38㎝。


台座部分 直径:約20㎝。








「Lebka konjugát 」

 

その豚は産まれた時に既に自我を持つ程非常に高い知能を有していた。

母親から乳離れする頃には人語を理解しており

同時に畜産農家で産まれた自分の未来がどういうものになるのかも理解出来ていた。

それは彼を常に絶望的な気持ちに追い込んだが

いくら高い知能が在ると言ってもそれだけで容易に回避出来る未来ではなかったのだ。



自分の周りの人間に知能の高さを証明出来たとしても一時期は珍しがられ延命出来るとしても

結果とし、その高い知能の秘密を探るために身体も脳も切り刻まれるだけのことになるだろう。









それでもどうしても生きていたかった。

生きてなにかをなしたいわけではない。

ただあまりにも絶望的な運命にたいしせめて本来在るべき彼の時間を生きていたかったのだ。



そもそもあまりにも高い知能をもった彼にとって仲間の豚は全く別種の生物であり

彼は始めから孤立していたのだ。

だから仲間達に愛情も同情心も持てなかったし彼らの運命等彼にはどうでも良いことだった。

彼らはその事実を一切認識出来ず、与えられた餌を食べる事だけにしか興味が無い

くだらない生き物でしかなかったからだ。

だが家畜小屋の隅に放置されていた、とても大きな鏡に映る自分の姿は

自分が見下している仲間達と寸分違わぬ姿であり、そのことがより彼を絶望的な気分に追い込んだ。



だが、この家畜小屋には他に見るべきもの等無く、

やがて彼はその鏡の前で過ごす時間が増えていったのだ。

彼に残された時間は半年程であって、そのときになれば仲間と一緒に屠殺場に送られ

棍棒で気絶させられた後、逆さに吊るされて首筋にある頸動脈を一気に切断され出血死させられるのだ。

血が抜けると首と手足を切断され皮を剥がされ背骨のところから両断されただの肉塊と化す。

それに至るのには30分もかからないだろう。



だが



そのどの時点で命が潰えるのだろう?

それを何処迄認識しているのだろう?



血を抜かれたからと言って直ぐに意識が消え去るわけではない。

首を切断されてもまだ意識があるかもしれない。

脳に送られる血液が途絶えたからといって直ぐに死ねるわけではないのだ。

自分の手足が切断され皮を剥がれ背骨を切断されて行く

絶望的な光景を延々と眺めなくてはいけないのかもしれないのだ。



それは堪らなく辛い事だった。



それもあってか 彼は時間の許す限り鏡の前で自身を凝視するようになっていた。

まるで脳裏に自分の生きている姿を焼き付けるかのように。



だが



彼が屠殺場に送られる3週間程前に奇跡が起こった。

彼は鏡の中に入れるようになっていたのだ。

そうやって彼は幽霊のような存在になった。

餌を食べると鏡の中に入ってしまうので人には補足出来ないのだ。

でも鏡の中を覗けばそこに彼の姿があるのだが、誰もそんなことは思いつかなかったのだ。









彼は鏡のなかで安全に成長し続けていた。

しかし屠殺場では居る筈のない豚が餌を食べているところが何度も目撃されるので、

やがて近所の少年を雇って監視までさせていたが

豚は用心深く、彼が居眠りする僅かな間に出て来て餌を食べ鏡に戻ってしまうので

結局なにもわからないままだった。



豚を出し入れするゲートの鍵は頑丈で開けづらいものにかえられ塀も鉄柵に変えられたが

それでもその幽霊のような豚は現れ餌を食べるとこつ然と消えてしまったのだ。



気味が悪くなった家畜小屋の主人は、色々な学者や研究者に相談を持ちかけたが、

誰も明快な回答を出せないので、知人のつてを頼って古代の魔術や錬金術を研究しているという

乞食のような老人に問題の解決を依頼した。






老人は家畜小屋を念入りに調べると、銀の弾丸を込めた古めかしい古式銃と大きな鏡をもって

満月の夜に再び現れた。

家畜小屋の従業者達に手伝ってもらい、大きな鏡を元々あった鏡の前に向かい合わせて

平行におくとそこに無限の光の回廊が現れた。

すると老人はその鏡と鏡の間に特にその豚が好んで食べるという餌をおいた。

人々が隠れて見守る中真円の月が真上に昇ると、辺りはほの青い光に照らされ

鏡の奥から豚が餌を食べに現れた。



だが 直ぐに古式銃を構えかくれている老人に気づいて

そのまま老人が置いた鏡の中に逃げ込もうとしたのだ。

ドンという大きな音がして豚が逃げ込もうとした鏡が粉々に砕け散った。



細かく砕けたガラス片のなかで、それは実に奇妙な光景だったが 

2匹の豚が頭が繋がった状態で悲鳴を上げもだえ苦しんでいたのだ。



だが暫くすると奇妙な豚はだんだん動かなくなり、そのまま死んでしまった。

老人は問われるままに結果を説明し始めたが、それは理解しがたい話だった。








この豚が人に勝る知性を有していた可能性が高い事。

その知性によってか、それとも本来あり得ない知性を授かったのと同じように

自身を光のようなものに変える能力を持っていて、その力で鏡の中に隠れていた事。



それをおびき出して慣れない違う鏡に逃げ込ませ、

一瞬豚が躊躇したその隙に鏡を割って豚を捕らえたのだが

現実に在る身体と鏡に映り反射している身体が鏡を銀の弾丸で割ってしまった事で実体化し、

このような奇妙な姿になった事等。



どれもこれも信じがたい話であり、家畜小屋の人達は魔物と言って恐れ、

そのままその奇妙な豚を焼き捨てようとしたが、老人は首だけを切り離し研究用にと持ち帰った。









結局彼への報酬はそれだけで良かったようだ。

それから戦争があり、その家畜小屋さえ空襲で焼けてなくなり、

跡地が映画館等と言う新しい歓楽施設になっていた。



人々がまだ目新しい映画という娯楽に熱狂していた頃、

その奇妙な頭が繋がった豚の頭骨で作られたランプが町外れの骨董屋の店先に並んでいたそうだ。



それをかつて家畜小屋従で見張りをしていたという男が見つけて購入したのだが、

それはそう高価なものではなかったということだ。








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