「記憶」を媒体とした空間造形から、ある種のノスタルジーを感じさせる世界を表現する造形作家 植田明志。
無音のような静けさと、理想的な深層心理の核心を探求する、
その作品世界は見る者の心に深い余韻を残します。
深い山に入り込んだ時にふと感じる気配のようなもの〜
古来より信仰の対象とされ、畏怖されてきた、山々の精霊や妖怪のような目に見えぬ存在に
姿・形を与えて具現化した通称 “山人(やまと)”と呼ばれるオブジェ作品。
山人と共生関係にある"童蟲"と名付けられた虫型の立体作品のシリーズ。
童蟲のうちの一種「ヤマノハゴロモ)」の幼虫形態。
植田明志作品に用いられるる老人のような顔に、
樹木の生い茂る森のような体表のデティルに "山人"達との共通項が見られます。
幼虫の尻尾先端部には"金童"と名付けられた赤子のような顔が造形されています。
作品には木箱が付属。
中には綿が詰められており作品を収めてディスプレイして頂けます。
古びた木箱の質感とアンティーク調に染めた綿の色合いも相俟って
本草学的な佇まいを感じさせるものとなっています。
また作家肉筆による「ヤマノハゴロモの生態図」が付属。
ヤマノハゴロモの幼虫形態と蛹が描かれています。
「山乃羽衣」
春カラ夏ニカケテ
ヨウチュウ カラ サナギニナル.
ヨウチュウ ニハ 金童とヨバレル カオガツク.
夜になルト泣く.
オ気ニ入リノポケットを ミンナモッテル.
ポケットから エサヲサガス.
「ヤマノハゴロモ(幼虫)」
体長8cm〜12cm
彼ら 童蟲(どうむ)は、山人が食べた記憶の実のメモリー内の「記憶」の
消化しきれない「記憶」を食べてくれ、山人と童蟲は共生の関係にある。
しかし、彼ら童蟲がどこからやってきて、どのように子孫を残しているかは全くの未知である。
彼らは食べた「記憶」の質や内容で、成虫になる際どの様な形態になると言われているが、
そのパターンは非常に多彩で、一丸に断定できないものがある。
ヤマノハゴロモ種の特徴としては、幼虫にはお気に入りのポケット(洞)があり、
そこに「未消化の記憶」を貯め、空腹になればポケットから手で掬いながら食べる生態がある。
ヤマノハゴロモ(幼虫)本体:直径約7.5㎝。
木箱全長:13㎝ × 13㎝ × 13㎝。
石粉粘土、アクリル彩色。