「記憶」を媒体とした空間造形から、
ある種のノスタルジーを感じさせる世界を表現する造形作家 植田明志(うえだあきし)。
無音のような静けさと、理想的な深層心理の核心を探求する、
その作品世界は見る者の心に深い余韻を残します。
個展「遠すぎるパレード」用作品。
「ミスフェザー」と題されたオブジェ作品。
大型作品の中では、唯一女性の造形をしており
男性型の「白い街のロボット」の対となる作品です。
羽毛のような体表のデティールに大きく広げた3対の翼、
ゆらゆらと動く真鍮線は、彼女が飛んでいる姿をリアルに表現しています。
腹部に造形された町並みは淡い色彩の絵本のようなタッチで彩色され
家々のひとつひとつは、それぞれが大切な思い出や記憶の結晶を象徴しています。
背中には1軒の小さな家があり「ミスフェザー」と対になる
「白い街のロボット」の胸の空洞部分に収まっていた頃の
特別に大切な思い出を表しています。
石粉粘土。真鍮線。木材(台座部分)。
アクリル彩色。
全長:約57㎝。 幅:約40㎝。
高さ:約46㎝(オブジェ最上部から台座下部まで)。
※こちらの作品は、植田明志個展「遠すぎるパレード」
会期終了後(2014年11月30日〜)以降のお送りとなります。
納期に関してご希望がございましたらご相談下さい。
「ミスフェザー」
私はいつかの私ではなくなりました。
でも、まだ色んなことがひとつだった頃の街も、ちゃんと持っています。
窓の中を、覗いてみてよ。
小さい子供が、おもちゃで遊んでいるねぇ。
ほら、こっちの窓はオレンジ色。よく見えないや。中は何があるんだろうねぇ。
この窓からは、いつかの宝物が、ほら。きらきらしてる。
ほら、眼を閉じたクジラが見えるよ。
あ、そうだ。
ここを覗いてみて。
あなたと私が見えるでしょう?
ほら、笑ってる。
だからねぇ。大丈夫。仕方ないことだから。
あなたの羽根は大きいから、きっと大丈夫。
わたしはもうすぐ消えてしまうけど、
遠くにいくんじゃないんだよ。
そのときがきたらねぇ、きっとぐっと近くなって、
またあなたと、ひとつになれるから。