「記憶」を媒体とした空間造形から、
ある種のノスタルジーを感じさせる世界を表現する造形作家 植田明志(うえだあきし)。
無音のような静けさと、理想的な深層心理の核心を探求する、
その作品世界は見る者の心に深い余韻を残します。
個展「遠すぎるパレード」用作品。
「白い街のロボット」と題されたオブジェ作品。
天使のような翼を持った人型の存在が造形されており、
女性型の「ミスフェザー」の対となる作品です。
個展「遠すぎるパレード」の舞台である白い星の大地を表現した台座。
寂寥感を感じさせる白い大地をゆっくりと進む姿が、
見る者に白い星の情景を思い起こさせます。
上半身を覆う流れる雲のようなラインが、
静かに進む「白い街のロボット」の歩みを感じさせます。
腹部に造形された町並みは淡い色彩の絵本のようなタッチで彩色され
家々のひとつひとつは、それぞれが大切な思い出や記憶の結晶を表しています。
胸にある空洞部分は、対になる作品「ミスフェザー」の背中にある1軒の家が、
かつて収まっていた名残りであり、失くしてしまった大切な思い出の象徴となっています。
石粉粘土。木材(土台部分)。
アクリル彩色。
横:約46㎝。 高さ:約50㎝。 幅:約25㎝。
「白い街のロボット」
あの子、なんだか悲しそう。
真っ白な公園でブランコに揺られた子は言いました。
あっ。
静かに歩く彼から街がひとつ剥がれ落ちます。
音を立てず街は地面に埋まりました。
街が沈んでいきます。
その時に僕らは少しだけ悲しい気持ちになるのです。
その街の明かりが消えるころ、
あの子のことも忘れてしまうんじゃないかって、思うんです。
僕らは、彼が過ぎるのを待ちます。
心の中でそっと祈ります。
あの子は優しかったねぇ。
あの子が沢山の羽で飛んで行ってしまった時、それはもう綺麗でした。
彼がそのことの本当の意味を知ったとき、彼も消えてなくなるでしょう。
だから、どうか
あの子と一緒になりますように。
そうやって僕らはこの白い星で祈ります。
彼が消えるとき、僕らもきっと消えてしまうとしても、
それでも少しだけ、眼を閉じて祈るんです。