「記憶」を媒体とした空間造形から、
ある種のノスタルジーを感じさせる世界を表現する造形作家 植田明志(うえだあきし)。
無音のような静けさと、理想的な深層心理の核心を探求する、
その作品世界は見る者の心に深い余韻を残します。
個展「遠すぎるパレード」用作品。
「夕焼け犬の夢」と題されたオブジェ。
夕焼けの中を歩く不思議な犬のような生き物をイメージした作品です。
燃える夕焼け空のようなオレンジ色の体色に
空の雲や風が流れていくように表現された毛並みの造形。
背中には小さな家々も作られています。
夕焼け犬の背中に乗った "大切なもの” の象徴である星の使いたち。
3人の星の使いたちは、時間の流れを表す "風のマフラー" を首に巻いています。
全長:約40㎝。高さ:約28㎝。
石粉粘土、アクリル彩色。
「夕焼け犬の夢」
僕にはきっと大切な夢があります。
僕にはきっと大切な願いがあります。
昔に遊んでくれたときのことを、思い出そうとするけど、なんだか胸がきゅっとなるんです。
夕焼けに照らされた田んぼの道を思い出します。
すすきが風に揺れて、草たちがとてもいい匂い。
影と光しかないみたいに、綺麗なんです。
寝転がると、地面がとても暖かくて、そのまま夕焼けの日に焼かれて僕は風とひとつになります。
僕はそれから、いつかの子供達の声と重なって、手の暖かさを思い出します。
ほら、僕は笑っていたでしょう。
子供たちもみんな笑っていて、頬も夕焼けみたいになって。
でもきっと夜がくるとき、僕はもう見えなくなって誰にも触ってもらえなくなるんです。
だから、僕は夜がきたら丸くなって眠ることにします。
ほら、夜がくるからまた夕焼けがくるでしょう?
それまで、眠っています。
きっとまた、子供たちが少し大きくなって、暖かい手で僕を撫でて起こしてくれるんです。
そのとき、僕も、子供たちも、また夕焼けに溶けて笑うんです。