「記憶」を媒体とした空間造形から、
ある種のノスタルジーを感じさせる世界を表現する造形作家 植田明志(うえだあきし)。
無音のような静けさと、理想的な深層心理の核心を探求する、
その作品世界は見る者の心に深い余韻を残します。
個展「遠すぎるパレード」用作品。
「小さな月の車」と題されたオブジェ作品。
白い星のパレードの物語のエピローグ的な位置づけとなる作品です。
三日月のシルエットを象ったクラシックカーのような外観の「小さな月の車」。
今までの植田明志作品には無かったエキゾチックな意匠と色彩で彩られ、
どこかの国のバザールで売られているお土産物のような
古美掛かった仕上げが施されています。
植田明志作品の特徴である老人のような顔。
その顔は、穏やかに目を閉じて、静かに眠っているかのように造形されています。
月の車の内部には "アイデンティティー" の象徴であるキャラクター
「テイテイ」が搭乗しており、ピアノを弾いています。
鍵盤を弾く事によって動く「小さな月の車」は、ピアノの音色が動力源となっています。
高さ:約15㎝。 横:約17㎝。
石粉粘土、アクリル彩色。
「小さな月の車」
ポロン ポロン
パレードが終わったと思ったら、ひとり、遅れていたようです。
僕と、あなたの前を、歌いながら、少しだけ寂しそうにして。通っていきます。
僕と、あなたは、声に出さず、少しだけ笑って。
ポロン ポロン
少し、音を外しながら、ぎっこんばったんと、進んでいきます。
前に進んだと思ったら
また少しだけ後ろに下がったりしながら。
窓の向こうには、少し恥ずかしそうにした宇宙が見えました。
僕と、あなたは、少し笑ったまま、小さな声でハミングをします。
だって、どこかで聴いたことのある歌だったから。
もうすぐ、僕とあなたは消えてなくなります。
きっと夕焼けが、燃やしてくれて、風と一緒にしてくれます。
その後に、きっと優しい夜が僕らを食べてくれて、
最後にきっと、あの月の上で、
また、笑い合えますように。