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植田明志 「化石飛行士」

¥35,200 税込
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「記憶」を媒体とした空間造形から、


ある種のノスタルジーを感じさせる世界を表現する造形作家 植田明志(うえだあきし)。


無音のような静けさと、理想的な深層心理の核心を探求する、


その作品世界は見る者の心に深い余韻を残します。









個展「虹の跡」用作品。


「化石飛行士」と題された小作品。


沢山の夢を載せて飛び立つ巨大な飛行船のような「starmine」。


その「starmine」を導く引率者をイメージした作品です。









石粉粘土。


アクリル彩色。


全長:約11.5㎝。




















『star mine』



今まさに出発の時だった。


その出発地には、すでに沢山の見物者。



この飛行船は、誰かの夢なのだろうか。


しばらくすると、小さな歌が聴こえてきた。出発の合図だ。













少しづつ飛行船が地面から浮き上がると、その大きな化石はぱらぱらと音をたてて、


きらきらとした銀色の破片を地面に落とした。


それが見物者たちの頭上に、かすかな夕立のように降り落ちた。


子どもたちは笑ったり、頭に乗ったその破片を興味深く覗きこんだりしていた。






いつしか小さな歌は段々とその輪郭を増し、確かに聴こえる音楽となっていた。


見物者たちが、口を揃えて歌っているのだった。


宇宙に浮かぶ星たちは振動するように瞬いて、その出発を祝福した。














どうか無事に。その子のことをよろしく。


見物者たちは、みんな一斉に目を閉じた。


みんな一斉に眠っている子どものことを想った。


彼の無事を祈った。その願いは、結晶化する雪のように強固で、儚かった。





花火があがった。


その花火は最後のお別れを言う子供みたいに、思い切り体を広げて散って行った。


沢山の花火は、いつしか大きな花束となり最後の祝福と、賛辞を、思い切り叫ぶ。


そしてすぐに枯れた。


飛行船は大きく口を開けたまま、そのまんまるな瞳にそれを映させた。


花束のすべてを。





もう、これでフィナーレ。


見物者たちは、静かに目を閉じたままだった。


何人かは飛行船を先導しに、その後をついていった。












眠ったままの子どもは、いつか目を覚ますのだろうか。


祈ってくれたたくさんの見物者のことを思い出せるだろうか。





出発地には、落とされた沢山の破片が残っていた。


それは振動する星たちの光に合わせて、いつまでもきらきらと光った。













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