「記憶」を媒体とした空間造形から、
ある種のノスタルジーを感じさせる世界を表現する造形作家 植田明志(うえだあきし)。
無音のような静けさと、理想的な深層心理の核心を探求する、
その作品世界は見る者の心に深い余韻を残します。
「子供と魔法展〜神話」出品作品。
「はじまりの子供(太陽)」と題されたオブジェ。
宇宙の始まりを卵とし、時が来れば卵が割れ万物が生まれ出るという
卵生神話をモチーフにした作品です。
原始の太陽を擬人化したような "はじまりの子供" 。
被服の表面には古代の壁画ようなディティールが彫刻され
胸元には、祈りを捧げているかのように交差した両手が造形されています。
"はじまりの子供(太陽)" の背面。
背面にも隙間なく彫刻された模様。
顔の位置には表面の子供とは異なる仮面のような顔が彫られています。
"はじまりの子供" の両脇で、ひっそりとその手を握った「テイテイ」たち。
植田明志作品に於いて、アイデンティティの象徴であるキャラクター「テイテイ」も
土偶のような質感で表現されています。
高さ:約32㎝。
横幅:約16.5㎝。
石粉粘土。透明水彩。
「始まりのこども」
卵から、とうとうふたつの歌が重なり合うと、月と太陽が生まれました。
ふたりは白い星を、歌いながらでいつまでも歩いています。
彼らは探し物をしているようでした。
白い大きな岩をどかしてみると、さらに真っ白な「星の記憶」達が恥ずかしそうに逃げていきます。
ふたりは彼らを捕まえると、太陽は自分の服に入れたり、手を繋いだりしました。
月は、彼らのために服をこしらえたりしました。
すると星の記憶達はそのまま安心して
砂糖菓子のように硬くなって、眠りこけていってしまうのでした。
沢山の星の記憶を捕まえると、みんな合わさって、大きな星になりました。
「僕らは卵に刻まれていた説明書通りに、役目を果たしました。」
「でも僕らの卵を運んでくれた記憶は、見つけられなかったねぇ。」
彼らはふっとそんなことを言うと、
ようやく世界が始まったかのように笑い合いました。