日本一クレイジーな骨董店「アウトローブラザーズ」を営む傍ら、
動物の剥製や骨格、古物などを癒合させ、唯一無二の作品を制作する現代の錬金術師・マンタム。
チェコのシュルレアリストであり映像作家のヤン・シュヴァンクマイエルはじめ
様々なアーティスト、クリエイターとの親交でも知られています。
死より生まれる新たな文化をコンセプトに掲げるマンタムの作品たちは、
錬金術的と表現するに相応しいプリミティヴな力強さと奇妙な美しさに溢れています。
「封印のつけられた13の背骨」と題されたオブジェ作品。
燭台から伸びた背骨の先にはアルマジロの頭骨とアンモナイトが付けられ、
太古の呪具のようなプリミティヴな魅力に溢れています。
また、作品の背景となる、滅びた街と蜃気楼に纏わる奇妙な物語も相まって
シンボリックな作品となっています。
全高:約34㎝。
奥行き:約21㎝。
台座底面:直径 約6.5㎝。
「 蜃気楼は遥か彼方の現実であって手に取って理解出来るそこにある現実ではない
そもそも既に手元にあるべき現実に向き合っているのなら
遥か彼方に光学的現象で見える現実等遠い他者のもののはずなのだ。
それでもその遥かな他者の現実が羨ましく思えるのは、目の前の現実から既に逃避傾向にあるからであり
それは曖昧な未来への希望的願望に過ぎない。
このアルマジロの頭骨を備えた小さなシンボルは蜃気楼が時として
その光学的特製から大きさを変幻させることがあり
それによって蜃気楼をみるものを幻惑させるための工夫である。
このシンボルが作られた地方では外来者の来る道は限られていて
季節的にも変化の乏しかった時代でもあるために蜃気楼の発生する位置と時期、
時間帯等が、ほぼ変わらない事を利用し工夫されたものである。
つまりちょうど水も切れかけて分かれ道に来た時に片方の道の向こうには
何とも言えぬ異形の悪神が立つわけであり、しかもそれが雲をつくように巨大であれば
そこに近寄ろうとするものは居ないだろうという、
当時の事情からはやむを得ないであろう防衛策だったのである。
僅かなオアシスとそれにしがみつくように暮らす
とても豊とは言えない民に取っては、それも生き残るための一つの方法だったのだろう。
彼等のオアシスの回りには同じような頭骨を使ったシンボルが幾つも置かれていて
静かな湖面が反射したそのカゲを蜃気楼で巨大化し、
やがてそのウワサで誰も寄るものはいなくなってしまったのだ。
その結果は明白で、そういった他民族との軋轢を、恐怖から拒否するような一族に
繁栄の道等あろう筈も無く、限られた資源と知恵だけでは生き延びる事等できず
あるときまやかしに気付いた馬賊の一団に押しつぶされるように根絶やしにされてしまったのだ。
今は彼等が作ったシンボルを真似たお土産のようなものが
彼等の居たオアシスで売られているだけである。