「記憶」を媒体とした空間造形から、
ある種のノスタルジーを感じさせる世界を表現する造形作家 植田明志(うえだあきし)。
無音のような静けさと、理想的な深層心理の核心を探求する、
その作品世界は見る者の心に深い余韻を残します。
「はじまりの鳥」と題されたオブジェ作品。
眠たそうに目を閉じた表情と、プリミティヴアートを想わせる
ユニークな彩色、模様が特徴的な小作品です。
宇宙の生まれる"始まりの卵" コズミッグエッグと、
その卵を見守る天使たちを造形した大型作品「embrace」。
「はじまりの鳥」は天使たちの雛〜幼生体であり、
背中に描かれた模様に成長した天使の姿との類似が見られます。
全高:約15㎝。 奥行き:約5㎝。
横幅(頭部の突起部分最長):約9.5㎝。
石粉粘土。
アクリル彩色。
「はじまりの鳥」
まだ陽は、夜に寄り添うようにして、すこし恥ずかしそうに顔を出しているところでした。
少しづつこちらを伺い、表情を明るくしているように思いました。
星やロケットが描かれたカーテンを開けると、
逆光の中、すべてが墨で黒く塗りつぶされて、影たちの悲鳴が聞こえるようでした。
2番目に近い電柱に目をやると、大きな鳥が居ました。
目を瞑って、まだ眠っているのか、
それとも何か想っているのか、その暗い中では表情はわかりません
ただただ、だんだんと青を濃くし、海に沈みゆく街を見ています。
その鳥は、その一日のはじまりを見守っているようでした。
最後の星とともにその姿は薄くなり、始発電車の音に滲んで消えていきました。
きっと、この一日は大丈夫な気がしました。
そして、また陽は役目を終えて、
この一日というちっぽけなすべては、また夜と寄り添うのです。