架空の博物学者、クーゲル・クラメンツ。
19世紀の前半、医師の子として生まれた彼は、医学を学びながらも、
幼い頃より、博物学に興味を持ち、自然界の珍奇なる物品を蒐集した。
青年時代、遠洋航海の機会に恵まれるという理由から、海軍軍医となり、
各地を訪れ 様々な形で、研究材料と称した珍奇コレクションを充実させていく。
やがて そのコレクションを基盤とした研究と販売を目的とした
「クラメンツ商會」を設立したものの、程なくして彼はこの世を去ってしまった。
それと共に消滅してしまった「クラメンツ商會」ではあったが、
1世紀以上が過ぎた現代、彼の住居跡から 遺された遺品が大量に発見され、
かつてのクラメンツコレクションが大量に残されている事が判明した・・・
架空の博物学者、クーゲル・クラメンツ氏の蒐集品の数々を
標本をイメージしたオブジェと対応する図譜で表現する「クラメンツ商會」の作品たち。
作品の背景となる、奇妙な標本たちの生態や、時代背景考証も相まって
博物学的な魅力溢れるものとなっています。
「ツメヒレヨロイウオ」と題されたオブジェ。
クラメンツ商會の蒐集品のひとつ、体の一部が金属化した深海魚の標本を表現した作品です。
「ツメヒレヨロイウオ」
クラメンツが海軍軍医としての遠洋航海時に入手した個体の一つであり、
地元の漁師の網に偶然引っ掛かった物であるらしい。
深海の海底近く生息しており、プランクトンを主食としている。
歯を持っておらず、捕食の際に大量の海水を吸い込むのであるが、
その水域に鉄分が多く含まれているので、
蓄積された鉄分が作用し、体の一部が金属化している。
光の届かない場所に生息する為に、目は退化しているが、
爪状のヒレがセンサーの役目を果たしていて、
餌を探す際や、外敵の存在を察知する能力を備えている。
本標本は、19世紀に採集され、乾燥標本にされた物だが、
経年変化に伴い、一部 錆が生じている。
作品には、クーゲル・クラメンツ氏が「ツメヒレヨロイウオ」を
採集した際に描かれた「ツメヒレヨロイウオ」の生態が描かれた図譜が付属します。
標本本体 ツメヒレヨロイウオ 全長:約17㎝。
高さ:約14.8㎝(台座底面からツメヒレヨロイウオ上部まで。)
図譜 縦:約23㎝。横:16㎝。
ツメヒレヨロイウオ本体:石粉粘土。
木材。真鍮線。
※こちらの作品は企画展「魂の或る場所」会期終了後(2016年9月11日以降)
のお渡しになります。