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植田明志 「飴玉金魚」

¥44,000 税込
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「記憶」を媒体とした空間造形から、


ある種のノスタルジーを感じさせる世界を表現する造形作家 植田明志(うえだあきし)。


無音のような静けさと、理想的な深層心理の核心を探求する、


その作品世界は見る者の心に深い余韻を残します。









個展「虹の跡」用作品。


「飴玉金魚」と題されたオブジェ。


「虹の跡」の物語の最後を飾る流れ星「夢の始まる場所」と


対となる金魚型の小作品です。











丸く膨らんだ身体の中に沢山の夢が詰まった金魚。


膨れあがっていった夢や記憶たちは、やがて金魚の尾ビレに


縛られた紐が解け、身体の中から飛び出します。











石粉粘土。


アクリル彩色。


金魚本体 全長:約12㎝。


高さ:約17㎝(台座底部から金魚尾ビレ末端まで)。






















『夢の始まる場所』



旅の途中だった。


パレードはいよいよ佳境。小さな演奏者達は少し飽きてきたようだ。


ちょっと抜けてあっちに行ってみようぜ。


僕らは少しだけズルをして、パレードから外れた。





ごつごつとした山道を進んでいく。


段々パレードの音楽が遠ざかっていく。


運動会で、ひとり体調を崩したとき、保健室で休む僕の耳に聞こえる歓声。


それを思い起こさせた。











少し切り立った丘の上が見えた。


あそこまでいってみようよ。


そこから見た景色の中は、上は満点の星空。


ちかちかと瞬く星たちは僕たちを少し叱っているようだった。






遠くでパレードが見えた。


彼らはまるで僕らのことを忘れてしまったかのように思えて、少し不安になった。












その瞬間、大きな流れ星が流れた。


それは本当に大きくて、緑色に光ったかと思えば、


桃色の尾を引いて、ぱらぱらと小気味の良い音を鳴らした。





こんなに大きな流れ星を見たのは、初めてだった。


その流星は僕らの頭上すぐですれ違い、


花火大会のように、地面と、僕らの頬を光で染めた。






ああ、なんて大きな夢。


きっと誰かが眠ったんだ。


その人の、報われなかった夢は、こうして大きな流星となって僕らを照らしてくれる。






報われなかった夢は、そのまま役目を終える。


でも、最後にこんなに素晴らしい景色を見せてくれている。


星が死ぬときと同じだ。






そして、この宇宙のどこかで、また夢が生まれるんだよ。


さあ。帰ろう。


みんなに教えてあげよう。











とびきり大きな夢を見たよ。


誰かが眠ったんだよ。


僕は、このことを、忘れられないよ。



僕たちは、かすかな音楽を頼りに、駆けだした。








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