「記憶」を媒体とした空間造形から、
ある種のノスタルジーを感じさせる世界を表現する
造形作家 植田明志(うえだあきし)。
無音のような静けさと、理想的な深層心理の核心を探求する、
その作品世界は見る者の心に深い余韻を残します。
「古い夢の終わり」と題されたオブジェ作品。
角の玉座に腰掛けた宇宙飛行士が、自分の中にいた天使を
逃してあげようとしています。
老人は髭で月を抱えていますが、その月の光は弱く
もう少しで消えてしまうでしょう....
植田明志が好んで用いる星や月のモチーフ。
それらに想いをはせた時の感情〜憧れや畏怖、切なさやノスタルジー
などを表現した作品です。
「古い夢の終わり」
彼は遂に天使を放った。
月はすでに壊れかけた外灯のように、チカチカと鳴いていた。
ぽっかりと黒い穴を開けた彼の左胸から、
心配そうな顔をした天使が出てきた。
彼は辛うじて動く左手で、優しく触れた。
小さな光の中で、天使は寂しく笑ったように見えた。
まるで星々の祈りのようなそれは、
遥かなる時空を超えて、私の心にも寄り添ったように思えた。
天使は静かにその手から離れていくと、
ゆっくりと深い闇に消えていった。
それがこの物語の終わり。
今日も子供たちは夕焼けの炎に焼かれ消えた。
誰もいなくなったジャングルジムには
捕らえられたままの小さな天使。
夜の星たちは、今日も恥ずかしそうに光っている。
約45cm × 約37cm × 約20cm。
石粉粘土、パテ、ドールアイ、ビーズ
アクリル彩色
※こちらの作品は2022年1月末以降の発送となります。